目から鱗の中国法律事情 Vol.63

2022/01/12

中国の法律を解り易く解説。

法律を知れば見えて来るこの国のコト。

 

中国の通信販売に対する規制 その1

日本では、通信販売などで物品を購入した場合、その商品を受け取った日から8日を経過するまでの間は、買主はその売買契約を解除することができるとしています(日本の特定商取引法第15条の3)。
これは、通信販売は、直接物品を見て購入を決めるわけではないので、その商品が想像と異なっていた場合に、買主を守るための規定と考えられています(その他、日本では通信販売に対しさまざまな広告規制などもあります(日本の特定商取引法第11条))。
それでは、中国では通信販売に対する規制はどのようになっているのでしょうか。今シリーズではこれを見ていきましょう。スクリーンショット (227)

消費者権益保護法による規制
中国には、日本でいう特定商取引法のような法律がありません。特定商取引法とは、特定商取引(訪問販売や通信販売など)を公正にし、購入者などが受けることのある損害の防止を図るとともに購入者等の利益を保護し、商品などの流通および役務の提供を適正かつ円滑にし、国民経済の健全な発展に寄与するために制定されました(特定商取引法第1条)。
これに対し、中国では、通信販売に対する規制などは「消費者権益保護法」で規制しています。これは、中国では通信販売によるトラブルは、消費者保護の対象と捉えているのに対し、日本では、消費者保護の観点も持ちつつ、国民経済の健全な発展のために規制をすることが必要と考えられているということの表れと言えます。
さて、中国の消費者権益保護法第25条および28条は、以下のように規定しています。

第25条 業者がインターネット、テレビ、郵便などの方法を用いて商品を販売したとき、消費者は商品を受け取ってから7日以内に、理由を説明することなく返品する権利を有する。ただし、以下の商品は除外する。
(1)消費者が注文したもの
(2)新鮮で腐りやすいもの
(3)オンラインでダウンロードした、また消費者によって開封された視聴覚製品やコンピュータソフトウェアなどのデジタル製品
(4)新聞や定期刊行物
前項の商品の他、商品の性質上、購入時に消費者が確認した返品に適さないその他の商品は、返品の対象とはならない。
(第25条は第3項まであるが、紙幅の都合もあり、今号は第25条第2項まで見る)


高橋孝治〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学 アジア地域研究所 特任研究員
中国政法大学博士課程修了(法学博士)。中国法の研究をしつつ、執筆や講演も行っている。行政書士有資格者、特定社労士有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』(労働調査会)、中国ビジネス法務にも言及した『中国社会の法社会学』(明石書店)他 多数。詳しくは「高橋孝治 中国」でネットを検索!

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