尹弁護士が解説!中国法務速報 Vol.53

2021/09/29

使用者による勤務部署と月額賃金の調整権(上)

 

Q.使用者はどのような場合に労働者の勤務部署と月額賃金の調整を行うことができるのでしょうか?
労働者が使用者による配置転換決定に同意しない場合、使用者はこれを理由に労働契約を解除することはできますか?

A.業務内容(勤務部署)、労働報酬などの労働契約の必要記載事項について変更する場合は、労使双方間で書面の合意を得なければなりません。ただし、使用者は関連法律に定められた事由が生じた場合、または労働契約もしくは社内規則制度において勤務部署と月額賃金の調整について約定をしている場合は、当該規定または約定に従い勤務部署と月額賃金の調整を行うことができます。また、法定の解除事由が生じた場合、使用者は関連規定により労働契約を解除することができます。

 

⑴使用者による配置転換権と解除権

労働契約法第17条によれば、労働契約は、業務内容(勤務部署)、労働報酬などの必要記載事項を約定しなければならず、労働契約で約定済みの業務内容(勤務部署)または労働報酬などを変更するためには、労使双方間で書面の合意を得る必要があります(労働契約法第35条)。

また、労働契約法第40条第1号、第2号の規定によれば、以下の事由が生じた場合、使用者は一方的に労働者の業務内容または勤務部署の調整を行うことができます。

①労働者が病を患い、または労災以外で負傷し、規定の医療期間の満了後も元の業務に従事できない場合

②労働者が業務に不適任である場合

更に、上記①のケースにおいて、労働者が、使用者が別に手配した業務にも従事することができない場合、上記②のケースにおいて、労働者が使用者による研修または勤務部署の調整を経ても依然として業務に不適任である場合、並びに労働契約の締結時に拠り所とした客観的状況に重大な変化が生じ、労働契約の履行が不可能になり、使用者と労働者との間で協議を経ても労働契約内容の変更について合意に達することができない場合(同第40条第3号)、使用者は、30日前までに労働者本人に書面形式で通知するか、または労働者に1か月分の賃金を余分に支払った後、労働契約を解除することができるとされています(労働契約法第40条)。

 

⑵実務上の留意点

①労働契約または社内規則制度で約定している場合

労働契約または社内規則制度において、労働者に次に掲げるいずれかの事由(例示)が生じた場合、使用者は労働者の勤務部署または業務内容を調整することができ、かつ調整後の勤務部署または業務内容に応じて労働報酬を新たに確定する権限があると定めている場合、当該労働契約または社内規則制度が有効であることを前提に、使用者は当該労働契約または社内規則制度における関連規定により配置転換と同時に労働報酬の調整を行うことが可能であり、労働者もこれら関連規定の拘束を受けることになります。

ⅰ)労働者が業務に不適任であると(社内で)評価判断された場合

ⅱ)労働者が病気を患い、または労災以外で負傷し、規定の医療期間の満了後元の業務に従事できない場合

ⅲ)使用者の生産経営方式の調整または事業部門の統廃合など、使用者の生産経営上の必要性に起因して、労働者の勤務部署の調整が必要な場合など

使用者は、自社の諸事情と必要性などを踏まえて、労働契約または社内規則制度において勤務部署及び月額賃金の調整に関連する事由を具体的、明確に定めておく必要があり、かつその内容の合法性と合理性を確保する必要があります。(次号に続く)


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尹秀鍾 Yin Xiuzhong尹秀鍾 Yin Xiuzhong
卓建律師事務所深圳本部 パートナー弁護士、法学博士 (慶應義塾大学)

【主な業務領域】
外商投資、移転/撤退、知財侵害、紛争解決

 

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