目から鱗の中国法律事情 Vol.59

2021/09/08

中国の法律を解り易く解説。

法律を知れば見えて来るこの国のコト。

 

中国の著作権法改正 その1

 中国では、2020年11月11日に「著作権法」が改正されました(2021年6月1日施行)。この改正は、「視聴覚的実演に関する北京条約」という著作権に関する国際条約に対応するためのものでした。「視聴覚的実演に関する北京条約」は、俳優や舞踏家などの実演している人の権利を保障するための条約です。このため、この「著作権法」改正では、映画の著作物などに対して大きな改正がありました。今回のシリーズでは、改正された点を主にして中国の著作権法の概要を見ていきましょう。

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  中国で著作権保護の対象となる著作物

 中国著作権法第3条では、保護の対象となる著作物について定められています。しかし、この第3条も改正が入りました。以下、旧法と新法の違いを見てみましょう。


中国著作権法第3条

 本法で作品というときは、次の形式で創作される文学、芸術と自然科学、社会科学、工学技術などの作品が含まれる。(太字下線部分が、新法では、以下の文言に改正「文学、美術および科学領域で、独創性を有し、かつ一定の形式で表現可能な知的成果をいい、次の各号に掲げる作品が含まれる。」)

(一)文字による作品
(二)口述による作品
(三)音楽、演劇、演芸、舞踊、曲芸芸術による作品
(四)美術、建築による作品
(五)撮影による作品
(六)映画作品および映画の制作に類する方法により創作された作品(新法では、以下の文言に改正「視聴覚作品」)
(七)工事・建築設計図、製品設計図、地図、見取り図などの図形による作品および模型作品
(八)コンピュータソフトウェア
(九)法律、行政法規に規定されるその他の作品(新法では、以下の文言に改正「作品の特徴があるその他の知的成果」)


 この旧法と新法の差異は、実はかなり大きなものです。まず、旧法の本文では、列挙されたものが中国著作権法でいう「作品」になるとしているのに対し、新法では「一定の形式で表現可能な知的成果で、次の各号に掲げる作品が含まれる」としています。これはどういうことなのか次回見ていきましょう。(続く)


高橋孝治〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学 アジア地域研究所 特任研究員
中国政法大学博士課程修了(法学博士)。中国法の研究をしつつ、執筆や講演も行っている。行政書士有資格者、特定社労士有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』(労働調査会)、中国ビジネス法務にも言及した『中国社会の法社会学』(明石書店)他 多数。詳しくは「高橋孝治 中国」でネットを検索!

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