尹弁護士が解説!中国法務速報 Vol.50

2021/08/18

深セン経済特区データ条例

 

 2022年1月1日より施行される「深セン経済特区データ条例」(条例)は、個人データ、公共データ、データ要素市場、データセキュリティ、法律責任を網羅する中国国内データ分野における初の基礎的かつ包括的な立法であり、全7章、計100条で構成される。

 

データ権の類型

 条例は、自然人が個人データに対して有する人格権益と自然人又は法人などが合法的にデータを処理して形成されたデータ製品及びサービスに対して有する財産権益を定めている。前者の人格権には、説明を受けた上での同意(知情同意)、補足訂正、削除、検索、複製などの権利が含まれる。また、後者の財産権は、これを法律によって自主的に使用し、収益を得て、処分することができる。

 

個人データの保護

 個人データの処理は、その処理目的を達成するために必要な最小限の範囲に限定し、個人の権益に及ぼす影響を最小限に抑える方法で行わなければならない。

 個人データを処理するには、データ処理者の基本情報、個人データの種類や範囲及びデータの保管期間並びに安全リスク、自然人が有する権利及び権利行使方法を事前に告知した上で、本人の同意を得なければならず、データ処理者は、当該自然人のためにその同意を撤回するルートを提供しなければならない。ただ、データ処理者が、自然人がその同意を撤回する前に当該自然人の同意を基に行った合法的なデータの処理行為は有効とされる。

 データ処理者が顔認証や指紋認証などの生体認証データを処理するケースは、個人データの処理目的を達成するために必要であり、かつその他の非生体認証データをもって代替できないケースに限定されるほか、本人の同意をを得ずに生体認証データを他の目的に使用してはならない。前記以外のケースにおいて、本人の明示的な同意を得る際に、非生体認証データを取り扱う代替案を提示しなければならない。

 14歳未満の未成年者の個人データは、敏感個人データ関連規定に準じて処理をし、かつその監護人の明示的な同意を得なければならない。

 条例は、自然人がその個人データの処理に同意しないことを理由として、データ処理者がその中心的機能やサービスの提供を拒否することを禁止している。

 

公共データの管理と利用

 条例は、教育、衛生健康、社会福利、供水、電力供給、環境保護、公共交通などに関する公共データの共有について、市政府はビッグデータセンターを建設し、共有システムを構築し、法律の許容する範囲内で最大限に無料開放すると規定している。公共データの開放条件は、無条件開放、条件付き開放と開放禁止の三つに分類される。

 

公平競争の促進と違法責任

 市場主体は、他の市場主体から不当な手段により得たデータにより、又は不当に集めた他の市場主体のデータを用いて代替的な製品若しくはサービスを提供し、他の市場主体の合法的な権利及び利益を侵害してはならない。また、データ分析を用いて、取引条件が同じ取引相手に対し、意図的に差別的待遇を与えてはならない。他の市場主体、消費者の合法的権益を侵害し、情状が深刻な場合は、最高5000万元を上限として前年度売上高の5%以下の罰金が科される。


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尹秀鍾 Yin Xiuzhong尹秀鍾 Yin Xiuzhong
卓建律師事務所深圳本部 パートナー弁護士、法学博士 (慶応義塾大学)

【主な業務領域】
外商投資、移転/撤退、知財侵害、紛争解決

 

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