尹弁護士が解説!中国法務速報 Vol.44

2021/05/19

独占禁止法違反としてアリババに
過去最高額の罰金3040億円

国家市場監督管理総局が2020年12月14日、アリババ傘下の「アリババ投資」等3社に対して独占禁止法(以下「独禁法」という)に違反しているとして、それぞれ制裁金50万元(独禁法第48条が規定する制裁金の上限額)を科す決定を下した(詳しい内容は「独禁当局の姿勢が「容認」から「締め付け」へ」の内容をご参照ください)。

また、国家市場監督管理総局は2021年4月10日、電子商取引(EC)大手アリババ(Alibaba、阿里巴巴)グループに対し、独禁法違反で違法行為の停止を命令するとともに約182億元(約3040億円)の罰金を科した。

国家市場監督管理総局は2020年12月、アリババグループに対する中国国内ネット販売プラットフォームサービス市場における市場支配的地位の濫用¹ 行為について調査を開始し、その調査結果を踏まえて罰金の金額が決められたとのことである。アリババの2019年の国内売上高(4557億元)の4%に相当する182億元の罰金は、中国の独禁法違反の罰金額としては過去最高であり、ネット大手に対する当局の統制強化が鮮明になったといえる。

国家市場監督管理総局による過去最高額の行政処罰について、アリババグループは、「今回の処罰を真摯に受け入れて従う」とコメントしている。

今回の調査対象は、アリババグループが取引先に対し、アリババのサイトでのみ販売し、競合サイトには出店、出品、販促キャンペーンなどをさせない「二者択一」の独占的行為をしていたとされる行為である。

中国は今まさにAIとビッグデータの時代に突入し、経済活動のプラットフォーム依存は強まる一方である。中国では、テクノロジーに精通したユーザーたちが、通信連絡やショッピング、各種料金の支払い、タクシーの予約、そしてローンの借り入れなど生活のあらゆる面でネット上のプラットフォームを活用している。

この中で、プラットフォーマー同士の競争が激しくなり、優越的地位を利用し取引先や消費者をグレーな手法で囲い込む行為も後を絶たない。中国当局は、このような無分別な事業拡張(無序拡張)とこれに伴う独占行為や、アリババなど中国の大手IT企業が影響力を強めることを懸念し、統制を強めている。

今回の行政処罰事例を通じて、今後は単なる独禁法に基づく主管当局の規制だけではなく、インターネットバンキング分野などに対する金融監督当局、司法、公安などの職能部門による有効な監督管理が一段と厳しく強化されるものと思われる。

¹「市場支配的地位の濫用」とは、市場支配的地位を持つ会社などが、その地位を濫用して不公正な取引などを行うことをいう。「市場支配的地位」とは、関連市場において商品の価格、数量もしくはその他の取引条件をコントロールすることができ、又はその他の事業者の関連市場への参入を阻害し、もしくはこれに影響を及ぶすことができる能力を有する市場地位を指す。

 


zhuojian

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尹秀鍾 Yin Xiuzhong尹秀鍾 Yin Xiuzhong
卓建律師事務所深圳本部 パートナー弁護士、法学博士 (慶応義塾大学)

【主な業務領域】
外商投資、移転/撤退、知財侵害、紛争解決

 

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