目から鱗の中国法律事情 Vol.54

2021/04/07

中国の法律を解り易く解説。
法律を知れば見えて来るこの国のコト。

 中国では、これまで長らく民法通則、物権法、契約法(中国語原文では「合同法」)など個別の民事法を寄せ集めて「民法的な法律」を構成してきましたが、2020年5月28日に「民法典」が公布され、2021年1月1日から施行されているとは、本連載でも何度も述べてきたことです(中国民法典施行と同時に過去の「民法的な法律」群は全て廃止)。本連載では、民法典制定に合わせてここしばらくずっと中国民法典を取り扱ってきました。今シリーズでは、中国民法典のうち、契約について見ていきましょう。

契約とは

 契約とは、当事者間で何らかの権利や義務を発生させる当事者同士の合意によって成立する取り決めのことをいいます。具体的には、例えばAさんが所有している本をBさんに所有権を移転させる代わりに、BさんはAさんに1000円を支払う義務を負うということを取り決めるなどです(この例の契約は一般的には売買契約と言います)。このように、契約というのは当事者同士で取り決めを行えばよく、民法ではよく使われる契約について規定しているのみで、民法上に規定されていないような契約についても当事者同士の合意で締結することができます(日本民法第521条第2項、中国民法典第467条第1項)。この民法に規定されている契約形態を「有名契約」とか「典型契約」といいます。

 日本では典型契約には、贈与契約、売買契約、交換契約、消費貸借契約、使用貸借契約、賃貸借契約、雇傭契約、請負契約、委任契約、寄託契約、組合契約、終身定期金契約、和解契約の13
種類があります。これに対して、中国ではもっと多くの典型契約があります。2021年1月1日で廃止された「民法的な法律」の一つ契約法と比べても、中国民法典では典型契約が増えています。以下、廃止になった契約法と中国民法典の比較を見てみましょう。

 

中国の典型契約
中国の典型契約

 

 本シリーズでは、中国民法典になって新しく制定された「保証契約」について見ていきましょう(保証契約は、これまで「民法通則」に簡素な規定があるのみでした)。

 


高橋孝治〈高橋 孝治(たかはし こうじ)氏プロフィール〉
立教大学 アジア地域研究所 特任研究員
中国政法大学博士課程修了(法学博士)。中国法の研究をしつつ、執筆や講演も行っている。行政書士有資格者、特定社労士有資格者、法律諮詢師(中国の国家資格「法律コンサル士」。初の外国人合格)。著書に『ビジネスマンのための中国労働法』(労働調査会)、中国ビジネス法務にも言及した『中国社会の法社会学』(明石書店)他 多数。詳しくは「高橋孝治 中国」でネットを検索!

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