尹弁護士が解説!中国法務速報 Vol.37

2021/02/03

派遣契約について

 

 駐在員事務所(常駐代表機構)は、現地で従業員を直接雇うことができるのでしょうか。また、日本では派遣期間の途中で派遣先が労働者派遣を打ち切ることは少なくありませんが、中国では派遣契約を解除して労働者を派遣元に戻すことができるのでしょうか。

 中国に駐在員事務所を設立する場合、派遣契約の問題は避けて通ることができません。駐在員事務所が従業員を雇用する場合、中国政府の指定する派遣会社(派遣資質要件を満たしていること)から労働者派遣を受けなくてはなりません。そのため、駐在員事務所は、従業員を直接雇用することができず、労働者派遣を受けることになります。
また、中国では、労働者派遣は機動的な人員確保のために広く用いられており、外国企業の子会社(現地法人)でも同様に広く用いられています(派遣労働者の使用比率の制限がある)。

派遣会社(派遣元)から労働者派遣を受けている際、「労働契約法」第65条第2項又は「労務派遣暫定規定」第12条に定める事由に該当する場合、派遣先(中国語で「用工単位」)は労働者を派遣元(中国語で「用人単位」)に戻すことができます。その際、派遣元は労働者との労働契約を解除することができます。
では、業務量が減って派遣労働者が不要となった等の理由で、派遣先が一方的に派遣元に戻すことはできるのでしょうか。
この点については、労働契約法その他の法令にも明確な規定がなく、派遣先と派遣元の間の派遣契約で定められると理解されています。そのため、派遣労働者を派遣元に戻すことを検討する場合、まず派遣契約の内容を確認する必要があります。
派遣労働者を派遣元に戻せる場合について派遣契約に特約がない場合、派遣先が一方的に派遣を終了することは難しいです。この場合、派遣先、派遣元、労働者の三者間で、労働契約の終了を合意する方法が採られることが多いです。また、労働者の同意を得るために、派遣先の負担で労働者への退職補償(法定の経済補償金又はこれを上回る補償金のことをいう)として、金銭の支払いが合意されることも少なくありません。

派遣会社から提示される派遣契約のひな形には、解雇のリスクを派遣先に負わせているものも多いです。派遣契約を締結する段階では、どのような場合に労働者を派遣元に戻せるかが交渉のポイントになります。また、派遣契約のひな形では解雇の際の経済補償金などを派遣先の負担としているものも多いです。そのため、労働者の離職に関して、会社がどの程度の経済的負担を負うのか派遣契約の内容を事前に確認する必要があります。
但し、実際にはこのような条項の修正は必ずしも容易ではありません。修正できない場合は、派遣契約であっても直接雇用した従業員を解雇する場合と同様の慎重な対応が求められます。
以上のように、派遣契約といっても日本と中国ではだいぶ様子が違いますので、注意が必要です。

 


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尹秀鍾 Yin Xiuzhong尹秀鍾 Yin Xiuzhong
卓建律師事務所深圳本部 パートナー弁護士、法学博士 (慶応義塾大学)

【主な業務領域】
外商投資、移転/撤退、知財侵害

 

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