総合健康診断サービス「メディポート」健康コラム:賞味期限と消費期限

2019/06/26

堀様1

賞味期限と消費期限の違いをご存知でしょうか?少し前までは製造年月日が食品に記載されているだけでしたが、国際的な基準に合わせる意味もあって現在のような表記に変わってきました。日常の買物では多くの人がこの表示を確認し、たとえ1日でも新しいものを購入しようとするようです。その一方でその意味を正しく理解できている消費者は意外にも少ないと思われ、その結果として食品ロスが異常に多くなっていることが問題として認識されるようになってきました。

賞味期限 消費期限

「賞味期限」とは、定められた方法で適切な環境下に保存された場合において、その食品に期待される「品質の保持が十分に可能であると認める期限」を示す年月日のことです。基本的には未開封が絶対条件となります。ただし、この期限を超えた場合であっても、ただちに品質が劣化するものではないと考えて差し支えはありません。このため「賞味期限」を過ぎた食品であっても、それぞれの食品が食べられるかどうかについて消費者が個別に判断すれば良いのです。決してすぐに食べられなくなるわけではありません。

これに対して「消費期限」とは、定められた方法により保存した場合において、「腐敗、変敗その他の品質(状態)の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと認められる期限」を示す年月日のことで、開封前の状態で定められた方法により保存すれば食品衛生上の問題が生じないという期間です。消費期限は製造からおよそ5日以内で設定されますが、中には弁当など極めて傷みやすく、しかも見た目や臭いなどでは判断することができない食中毒リスクが生じるものについては、期限を時間まで区切っているものさえあります。消費期限を過ぎた食品は食べるのを避けたほうが良いのは当然でしょう。

食品ロスの問題

2018年度版「世界の食料安全保障と栄養の現状」報告書で、国連は世界の飢餓人口は2017年に8億2100万人、つまり9人に1人が飢えに苦しんでいることを伝えています。その一方で世界で生産されている食料品の3割以上に相当する、およそ13億トンが破棄されている現実があります。これらを低栄養に苦しむ人々に回すことができればどんなに素晴らしいことでしょう。しかし一口に食品ロスといっても、それが生まれてくる背景は、生産者にあったり、消費者にあったり、あるいは流通業者にあったりで、決して単純な問題ではありません。破棄されている食品を有効利用する決定的な手段は、今のところありません。

消費者の意識を変える

さて、消費期限は厳密に守るほうが良いのですが、一方で賞味期限については、もっと寛容になるべきです。いまだに賞味期限が1日でも過ぎたら捨ててしまうという人もかなりいるようですが、これはあまりにも単純な思考で馬鹿げています。そんな感覚を消費者に持たせてしまわないように、最近では賞味期限を年月までの表示にするという動きもあります。ちなみに賞味期限は、食品メーカーが「微生物学検査」「理化学検査」「官能検査」といった検査の結果から導いた期限に1より小さな数字の安全係数(0.8とか0.7、厳しいところでは0.3というものもある)を掛けて決定されます。期限が過ぎた食品は食べたくないという「感覚」は分からないわけではありませんが、この期限は製造メーカーが十分な余裕をもって設定しているものです。しかも、かなり長く品質劣化がない食品であったとしても、あまりに長いと何か特別な添加物でも加えられているのではないか勘ぐって購入を避けてしまう消費者心理を酌んで、かなり短めの賞味期限を記載することも少なくはないようです。

今できること

賞味期限を無視しろとは言いませんが、期限が切れたことで即廃棄することはやめたいものです。レトルト食品や缶詰は賞味期限がないといっても良いくらい保存性は極めて優れています。賞味期限を1年や2年、いや5年過ぎたところで品質に変化はないと断言できます。最近では賞味期限切れの食品を、それと表示して売る小売店も少しずつ増えています。賞味期限に対する認識が変わりつつあるということですが、日本人にとってはなかなか受け入れ難いことなのかもしれません。はっきりといえることは、「賞味期限は食品を破棄しなければいけない期限ではない」ということです。家の中に眠っている食品の中に賞味期限切れを見つけたとしても、早めに食べてしまうことを意識する程度でかまわないのではないでしょうか。

日本は食料自給率が40%を切っています。ほとんどすべての食品を輸入しなければいけない香港における自給率は、わずか1%にしかすぎません。それにもかかわらずどちらも30~40%もの食品が廃棄されているのが現実です。どう考えても異常です。すぐに改善することは困難でも、個人の意識を変えて少しでも食品を無駄にしないように努力しなければいけないことは、食糧難とは縁遠い我々にとっての義務とでも言えることではないでしょうか。

 

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