総合健康診断サービス「メディポート」健康コラム:コレステロールは悪者じゃない!

2018/09/26
メディポート代表:堀 眞

メディポート代表:堀 眞

昨今の健康志向の高まりでコレステロールのことを気にする人は実に多いようです。たとえ自分自身は該当していなくても周囲に一人や二人、高コレステロールを指摘されて薬の処方を受け続けている人があるはずです。卵はもちろんのことエビやカニといえばコレステロールを連想してしまうなど、食品に対しても極端に神経質になっている人も少なくはないようです。一般にコレステロールに対するイメージは悪く、健康状態を害する諸悪の根源のように考えられているようでもあります。言い方を変えれば、コレステロールに怯えているようでもあります。そのわりにはコレステロールに関して正しい知識の持ち合わせが一般的に少ないことも確かなことのようです。コレステロールは不当に悪者扱いされている。私にはそのように思えて仕方がありません。

では、いったいコレステロールとは何なのでしょうか?

白~ごく薄い黄色の個体
化学式:C27H46O  密度:1.052g/cm3  融点:約150℃

このように書くとただの化学物質ですよね。その通り、複合体も少なくはありませんが生体内の物質であってもすべて化学式であらわすことができるのです。私自身も学生時代にコレステロールの化学式を初めて見た時、それまでのイメージとは異なることにとても新鮮な感覚を覚えたものです。油脂のイメージを持っている人も少なくはないと思いますが、純粋なコレステロールは150℃もの高温にならないと溶けない固体です。ただしアルコールなど有機溶剤には良く溶ける性質を持つ一方、生体内ではリン脂質と結びついた状態で血液に溶け込んでいます。

さて、そんなコレステロールですが、生体内では実に大切な働きをしているのです。ヒトの全身の細胞数はおよそ60兆個。古い細胞から壊され、新しいものに生まれ変わっていくのですが、それらひとつひとつの細胞膜の構成要素としてコレステロールはとても重要なのです。妊婦のコレステロールレベルはとても高くなります。これはお腹の赤ちゃんが細胞分裂を猛烈に繰り返して成長するために大量のコレステロールを必要とするからです。コレステロールは決して悪者などではなく、それどころかコレステロールなしでは生命を維持することが不可能なのです。不足が許されないコレステロールなので、基本的に肝臓で血中濃度をコントロールしているのです。食品からの食餌性コレステロールが不足すれば肝臓で合成するし、摂取過剰になればその合成をストップするのです。しかし高コレステロールの遺伝子を持つ人の場合、食物からのコレステロール摂取を気にしてどんなに気を付けていても遺伝情報に記載されているレベルに血中濃度を維持しようと肝臓で過剰に合成されてしまいます。つまりコレステロール値が高くなりやすい人の場合、肝臓で大量に合成されるコレステロールに食餌性のコレステロールが加わって、さらにコレステロール値を高くしてしまう危険性が生じるのです。コレステロール値に問題がない人にとってはコレステロール摂取を基本的に制限する必要はありませんが、高コレステロール血症の人にとっては、なるべく摂取しないように心がけたほうが賢明であることは確かです。

これまでコレステロールに関して非常に厳しい指導を受けていた人が多いのではないかと思いますが、その多くは特に治療を要しないものであったとも考えられます。もちろん心臓の問題を抱えている人で、コレステロール値の目標を特別に低くしなければいけない人もいますが、どちらかというと医者の都合でコレステロールに対する指導が行われていた可能性すらあるのではないかと、個人的には強く疑っています。なぜそのように考えるのか、その理由をここで詳しく述べることはしませんが、これまでの画一的な指導が適切ではなかったとの認識が広がっており、今後は高めのコレステロールに関しても緩やかな見方をされるようになるのではないかと思います。

最後に卵の話をしておきましょう。コレステロールを気にして卵は一切食べないという人もいます。外から栄養補給することが無いにも関わらず完全なる生命体であるヒナが生まれてくる卵。考えたらすごいことではありませんか? ヒナが殻を割って出てくるまでに卵のコレステロールを利用して著しく細胞分裂を繰り返します。そのため卵にコレステロールが多量に含まれるのは当然のことですが、コレステロールだけが卵に含まれているわけではありません。一つの生命体が生まれてくることを考えると、卵は完全栄養食ともいえる優れた食品です。コレステロールだけを理由にして食べないなど、とってももったいない話です。

ここではっきり言いましょう。具体的な理由を説明することもなく、決まり文句のごとく「卵を食べてはいけない」と指導する医者は勉強不足。できれば避けておきたい。もしかするとコレステロールに関する捉え方を確認することは、良い医師を見つけるための判断根拠のひとつになるのかもしれませんよ。

Capture_2018.07宇宙飛行と食中毒予防

Pocket
LINEで送る